クロムの4コマW•最終話(12)
『また会う日まで』


「ふーん、大変だったんだねー」

「いや、大変というかなんというか......どっちかというと疲れたかな......」

そう言いつつオレは渇いた喉を潤すため、飲みかけのジュースを一口飲む。

「いやー、でもごめんねー!気づいてあげられなくて」

「別にいいよ。こっちでは一日の出来事だったみたいだし、普通に考えれば気づかなくて当然だ」

「そーだよねー」

「ところで、ミナノのやつは準備できたのか、ナノ?」

「んー?そういえばさっき廊下であたふたしてたのを見たよー」

なんだ、まだ出発してないのか。

まあ、あらかた準備に手間取ってるんだろう。それに.....

「クッ、クロムさん!!」

やっぱりきた。

オレが「準備できたのか?」と聞くと、ミナノは少し微笑みながら「はいっ!」とだけ答えた。

「あの、私クロムさんにすごくお世話になっちゃいましたね......」

「そうか?オレはそんなに面倒見た記憶はないんだけど」

「い、いえいえ!クロムさんがいなかったら今ごろどうなっていたか.....!!」

「.....まああれだ。短い間だったけど楽しかったよ」

「は、はい!私もです!」

そんな会話をしていると、扉の奥からミナノを呼ぶ声が響いてきた。

「ほらミナノ、呼ばれてるぞ?」

「あ、はい!あ、あのー......」

「ん?」

「ありがとうございました!!」

そう言うとミナノは踵を返し、自分を呼ぶ声の方に駆けて行った。

「へへ、礼を言うのはこっちだってそうなんだけどな......」

オレは飲みかけのジュースが揺れるグラスを見つめながら、そう呟いた......



「お、お待たせしました!」

「遅いぞ」

「ご、ごめんなさい!準備に戸惑っていたもので......」

「それで、どこに行きたいんだ?希望があるなら聞くが」

声の主に質問されたミナノは、うーんと悩むと、ぽんっと手を叩いて声の主に言った。

「あの、静かなところがいいです!私の能力が多発されないような場所があれば......」

「そうだな......ならスタビレッジはどうだ?」

「スタビレッジ....ですか?」

「ああ、こことは星が違うがこの星の隣あたりだったからおそらく空間の繋ぎもギリギリ届くだろう」

「あの、そのスタビレッジってどういうところなんですか?」

「そうだな.....」

ミナノに質問された声の主は、頭を少し抑えると、「えーっと」と言って思い返していた。

少し経つと声の主は思い返すのをやめ、ミナノに語りかける。

「悪い、細かいことは忘れた」

「え、ええー.....」

「だがたしか、ゆったりした空気で住人も少なかったはずだ」

「そ、そうなんですか⁈」

「ああ、確かな。どうする?そこにするか?」

再び質問されたミナノは一瞬だけ悩む動作をしたが、すぐに何かを覚悟した顔つきで答えた。

「はい!私、そこにします!私をそこに連れて行ってください!」

「そうか、分かった。じゃあもう行くぞ?準備はいいな?」

「はい!!よろしくお願いします、シキさん!!」

その声を最後に、そこまでそこで会話をしていた2人の球体は一瞬のうちに消えた.....




..............

うん.......?

「はっ⁈いつの間に寝て......って痛!」

咄嗟に起き上がろうとした瞬間、何かに頭をぶつけて小さくうずくまる。

痛みに頭を抱えてながらも、周りを見渡してみると目の前で同じようにうずくまっているミナノを見つけた。

「あ、ミナノ!わっ、悪いな......」

「も、もう......びっくりしましたよ!でも......」

「......でも?」

「目を覚まして良かったです......」

そう言ったミナノの顔はさっきの痛みのせいなのか、それともオレを心配してなのか、それとも両方なのかは分からないが涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「お、おいどうしたんだよ......そういえばユーシャは⁈マッハは⁈あの後どうなったんだ⁈」

「え......うゔ......あの......」

泣きながらも必死に何かを伝えようとするミナノだったが、その声はか細くどんなに頑張っても聞き取れそうにない。

「もう何がなんだか.....」

「それは俺が説明しよう」

「‼︎」

急に声をかけられすぐさま振り向くと、そこには堂々とした態度でマッハが立っていた。

「マッハ!お前無事だったのか!」

「そうだな.....そうだよな......」

「マッハ.....?」

どこか様子がおかしい。マッハのやつどうしたんだ.....?

そう考えているとおかしな様子のマッハが突然大声で笑い始めた。

「マッハ⁈」

「あは、あはは、あはははははっ!!!あーもうおかしい!」

「お、お前マッハじゃないな!誰だお前は!!」

「俺か?俺はなぁ.....」

マッハはバサっという音ともに大きめの布を出すと、それを大きく上に放りなげる。

その布がマッハを一瞬隠し、再び隠れていた姿を見せると、そこにいたのは......

「マッ、マッハじゃない.....?!」

「ふふ、この姿で会うのは初めてね、クロム」

にやにやしながら謎の人物はオレにそう呟く。

まさかこいつは.......

「お前まさか.......イリ•ビリーフか⁈」

オレがそう叫ぶと相手はくすくすと笑いながら口を開く。

「ご名答ー!そうよ、私がビリーフよ。あなたをここに閉じ込めた張本人......のね」

「一体どうなってやがんだ......」

「ふふ、せっかくだし説明してあげるわ。もう時間切れだしね」

「時間切れ.....?!どういう意味だ!!」

「今言ったとおり.....つまりはそういうことよ。あなたがそこで寝ている間に24時間経ってしまったのよ」

「え.....それってまさか!」

「そう、マッハに化けていた私が話したことは全て本当のことよ。つまりはもうあなたは逃げられない。ここで死ぬか私が死なない限りね」

「なっ.....」

まじかよ......

まさかあの話が本当で、マッハが偽物だったなんて.....!!

じゃあ本物のマッハは今頃のほほんとしてるわけか.....
くっ......

でも一日じゃ気づくわけもないよなと思いながら、ビリーフに向けて叫ぶ。

「だったら少し気は引けるがお前を倒すだけだ!」

「ふふ、やってごらんなさい?やれるものならね.....」

「覚悟しろ......」
「うっ⁈」

途端にドスッと体を落とす。さっきまでは平然と立っていたのに、今では力が全くと言っていいほど入らない。

「だ、大丈夫ですかクロムさん!」

「ミ、ミナノ.....」

「あら、あなたは立っていられるのね」

「え......?」

ミナノがその言葉に一瞬驚きながらも、ビリーフは話を続ける。

「この空間は普通のことでは入って来られないようになってるんだけどね......」

「入って来られない......?」

「そ。あなたの能力だとは思うけど......まあ、いつこちらを攻撃してくるか分からないから警戒していたのだけど、入ってきただけで後は何もしないところを見るといらぬ心配だったみたいね」

「ミ、ミナノお前.......」

「えっと私は......」

直後ビリーフが「そんな話はいいわ」と叫ぶ。

オレたちの顔を少し眺めたあと、ゆっくりと口を開く。

「とにかく、もうあなた達はチェックメイトなのよ。このまま死ぬだけを待つ運命.......ってところね」

「くっ.......」

オレはそれでも何か手はないかと必死に頭を働かせるが、一向にいい案は浮かんでこない。

それとは逆に、体の力は徐々に抜けていくのを実感していた。

そんなオレを嘲笑うかのようにビリーフはオレのもとへと歩み、近くにいたミナノを跳ね除けオレの体を持ち上げる。

「うっ、くっ.....は、離せ.....」

「ふふ、このまま殺さずに観察するのもありだったんだけど......能力の説明をしちゃったし、何よりもう飽きたからやっぱりここで殺すことにするわ」

そう言って静かに空いている左手を上へ挙げる。その手にはおぼろげながらナイフが握られているのが見えた。

「さようなら!!」

「くっそぉ!!!」

「ク......クロムさぁぁぁん!!」

その刹那、何が起こったのかオレには分からなかった。

いや、オレだけじゃない。
泣き叫ぶミナノも、ナイフを振り下ろそうとしたビリーフも、その目を見開いたままその一瞬黙り込む。

オレに向けられ振り下ろされたナイフはカッっという音とともに宙へ放り出され、そのまま空中で半円を描くと吸い込まれるかのように地面に突き刺さった。

オレは我慢できずに真っ先に叫ぶ。

「ユッ......ユーシャ!!!」

「ユーシャさん!!」

「なっ、ユーシャだと⁈」

ユーシャはその場にいた全員の言葉を聞くと、背を向けていたオレの方に振り返り、そっと呟く。

「悪いな、遅くなって。大丈夫だったか?」

「ユーシャお前......でもなんでお前が.......!!」

「それは......」

「やっぱりそういうことだったのね......」

語りかけていたユーシャの言葉を遮り、1人呟くビリーフ。

その様子を見たユーシャは、「ふぅ.....」と一息つくと、話を続ける。

「クロム、ビリーフ、お前らの察しの通りオレはビリーフの能力によって作られたクロムの思い込みの幻覚だ」

「最初は確かに他のやつらと同様ビリーフの意のままに動く操り人形だったさ......」

「だがクロムが日に日に強くオレのことを思い込んでくれた結果、オレはこの能力内での一つのユーシャという存在になれた」

「だから今はクロムのために戦う。例えお前を殺してオレの存在が消えてしまうとしてもな.....!!」

「ユーシャ......!!」

まさかとは思っていたけど、そんなことがありえたんだな......

こんなにも嬉しいことはねぇ.......

でも......

「ユーシャ、それじゃもう」
「何も言うな」

そう言ってユーシャは小さく首を横に振る。

そう......か
それが運命なら受け入れるしかないのか.......

「クロムさん.....?顔が......」

「み、見んじゃねえよミナノ。見せ物じゃないんだ、この涙は.....」

「クロムさん......」

オレはミナノにこれ以上見られないようにと、必死に堪えようする。だけど流れ落ちる涙は一向に止む気配はなかった。

「クロム、もういいか?」

「......ああ!あ、当たり前だぜ!」

そう言うと、オレは今までと同じようにメモリを構え、押し込む。

〝ウォーター!〟

同じようにユーシャも見慣れたメモリ取り出し、そのメモリを強く押し込む。

〝ライトニング!〟

「ふん、確かにユーシャはもともとこちらの能力の一部。同化すれば戦えるけど、それで勝てるかしらね!」

「.......」

そんなビリーフの言葉を無視してオレ達は叫ぶ。

『変身!!』

直後ユーシャが自分のベルトのスロットにメモリを差し込むと、ユーシャはぐらりと倒れ、オレのベルトのスロットの一つにユーシャが差し込んだはずのメモリが差し込まれていた。

オレも同じようにメモリをスロットに差し込み...... 閉じていたスロットを思い切り開いた。

ユーシャ......オレは今回の出来事を決して忘れない。

お前は本当のユーシャじゃなかったのかもしれない......
けどオレには本物といた時と同じような感覚で共にまた笑い、悩み、戦うことができた。

ただ......ただ今はこう思う。

また、再び会える日を待ってるって......

直後、ゴオオオという砂を巻き上げる音と強風と共に、オレの意識は戻ってきて...そして......言った。

「さあ、お前の罪を数えな‼︎」



終わり。
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クロムの4コマW•11
『大きな勘違い』


この世界は残酷だ。
見たくもない現実を見せようとしてくる。

せっかく会うのならもっときちんとした形で会いたかったのに......

そんな想いしかない。

それでもオレが......
オレ自身がこの世界にピリオドを打たなければならない。それが例え辛いことであっても......




「うおし、とりあえずは集まったな。なんとか時間的にも間に合いそうだ」

「おい、集まったって.....」

あの後急いで探偵事務所に戻ってくると、ミナノが心配だったと言わんばかりに出迎えてくれた。

そしてマッハが大事な話があるからと集まったのだが......

「全員じゃねえぞ!ユーシャがいないじゃないか!」

そう、この場にいるのはオレとマッハ、そしてミナノの3人だけ。ユーシャはもちろん、ダンディや助けてくれた魔王.....もいない。

「いや、これでいい。後のメンバーはむしろいない方がいいんだ」

「ええ⁈ユーシャさんもダンディさんもいないのにですか.....?」

「ああ。それでだな......」

「ちょっ、ちょっと待てよ!!!」

オレは思わず大きな声を上げて立ち上がる。途端にその息が荒くなっていることに気がつきながらも、オレはキッとマッハを睨む。

「待てよクロム、落ち着け」

「これが落ち着いてられるか!こっちはもう頭パンクしそうなんだよ!!」

「分かってるよ。あれがお前の言っていたユーシャっていう仲間であることも、この世界がゲームの世界だったってことも」

「ならなんで......」

「とりあえずは俺の話を聞いてくれ。とにかく今は時間がないんだ。文句ならその後で聞くから......」

「......ッ!」

オレはまだ高ぶっている気持ちをなんとか抑えながら、渋々と椅子に腰掛け直す。

「悪いな。さてと、それじゃ簡潔に話させてもらうよ。ちなみにこの話はミナノにも関係するからよく聞いとけよ」

「は、はい!」

そう言ってマッハは一旦息を整えると、話を続けるべく口を開いた。

「まず最初にだが.....クロム、お前は大きな勘違いをしているんだ」

「勘違い.....?」

「ああ。そもそもここはお前の知っている世界じゃない。お前の勘違いによって創られた世界なんだ」

「......はい?」

え、ちょっと待って?
もっと予想がつかないようなことを言うかと思っていたのに、勘違い.....?

いやいや、確かにそれも十分予想外だが、そんなことって......?

そんなオレにはお構いなしにマッハは話を続ける。

「この世界は、とある能力者によって創られたんだ。クロム、お前を消すためにな」

「オレを消すため......?!」

「ああ。その能力者は〝相手の思い込みを具現化する力〟という力を持っていて、名前は.....」
「イリ•ビリーフ。かつてお前がナットさんと共に倒したという狂った魔女のお姉さんだ」

「おおお、お姉さん⁈」

嘘だろ⁈
あの魔女にお姉さんがいたのか.....!!

「いや、でもなんでオレを消そうとしてくるんだよ。確かにオレは狂った魔女を倒したが、殺してはいないぞ?」

「いや、それがこの前マジュコから連絡があってな。なんでもそのお姉さんがこの前突然訪問してきたらしく、その時にうっかり狂った魔女....もといイリ•クレジーがその時のことを話しちゃったらしいんだよ.....」

「ええー......もしかして」

「そう、その話を聞いたビリーフが猛烈に怒って.....後はもう分かるよな?」

いやいや、分からねえよ。
というか分かりたくもないよ。

なんでオレ⁈なんでピンポイントでオレなの⁈ナットさんだって共犯者じゃん!!

てか狂った魔女に名前ってあったのかよ!
そもそも......ああ......もう......

「ツッコミきれるか!!」

「......だよな。まあ気持ちは分かる」

「分かるってお前......」

「まあそんなことはいいんだ。ここで一番重要なビリーフの能力の説明をするからよく聞いとけよ」

「あ、ああ」
「はいっ!」

「ビリーフの能力はその名の通り、相手の思い込みを利用するんだ。相手が一瞬でも思い込んだことは現実となり、その瞬間思い込みの世界が生成される」

「思い込みの世界?」

「そうだ。そしてその世界に閉じ込められた相手は外からの干渉を全く受け付けなくなる。ただし、その世界を創るには少し時間がかかる上、創ってる間に他の誰かが干渉すると能力は発動できない」

「ふむふむ」

っと、オレは軽く相づちを打つ。

「そのため、かけ始めは対象を人のいない所に移動させるんだ。ビリーフは魔女のクレジーの姉だったから、何かしら幻惑させる物を持っていたんだろう」
「クロム、お前は最初何処かに移動しなかったか?」

「そういえば......」
「そう言われると確かに最初ユーシャに会った時に、ハート王国まで行くって理由で移動したな.....」

「やっぱりな......それでお前は閉じ込められたんだ」

「うええ、マジかよ.....でもそれならなんでお前がここにいるんだ?」

「それはだな.....ナノがお前の家に行ったときお前がいないって騒いでだな、まあ最初は何処かに行ってるんだろうと思ってたんだが、そこでマジュコから電話がかかってきたからもしやと思ったんだ」

「う、うむ」

「能力の事を聞いたとき、お前自体はすぐ見つかったんだが、中に入れないからどうしようか悩んだが.....ナノに頼んで俺だけ入れてもらったんだ」

「ナノの能力は万能かっ⁉︎」

「そうだな。それで時間がないと言ったのはその能力は丸一日経つと能力者か対象の相手が死ぬまで解けなくなるからだ」

「......え?」

「まあ安心してくれ。今ならまだ22時間、ギリギリ間に合う。お前がこの世界は偽りの物だと深く思い込めばこの世界は崩れさり、能力も解ける」

「どういうことだよ.....」

つまりは最初からユーシャ達との再会はなかったってことか?

あいつらのイメージがずれていたのは見せられた幻惑をオレがそれが正当なんだと受け入れてしまったからなのか.....?!

「つまりは能力が使えなかったのも、変身して戦うというのも、全部オレが思い込んだから....?!」

「ああ。ビリーフはそのきっかけを幻惑で作ったにすぎない。別にお前の記憶を知らなくても記憶を引き出すような幻惑だったんだろう」

「そんな......」

じゃあオレの今までの一ヶ月あまりの時間は無駄だったのかよ.....

くっ......

「あのー.....すいません.....」

オレがハッと気づくと、ミナノが何か言いたそうにこちらをジーっと見つめていた。

「なんだ、ミナノ?」

「あの、その話が本当なら私は......?」

「そういえばそうだな。なあ、お前の能力って......」

そう言いかけたとき、不意にバタンっという大きな音が鳴り響いた。

ゆっくりと音がした方を振り向いて見ると、そこにはユーシャの姿があった。

「はあはあ、酷いじゃないか。オレを置いて先に行くなんて.....」

「ああ、ごめ.....」

「まてクロム!さっきの話を忘れたのか⁈こいつはお前の思い込みでできた偽物なんだ!」

「偽物?それはお前だろ!オレは色々と調べてたから知ってるんだ!お前が今までクロムとオレを閉じ込めてたことは!!」

「そんなのおかしいだろ!クロムの話によればお前はゲームの世界の住人なんだろ⁈だったらここにいるはずがない!それにわざわざ能力の事をクロムに話すか⁈」

「それは時間稼ぎだろ?さっき倒したやつもそうだ!そうやって残り少ない時間を潰すつもりだったんだろ⁈」

「何適当な事を!!」

「そっちこそ!!」

おいおい、大変な事になってきたぞ......

こんな事態だってのに、事もあろうかマッハとユーシャが口喧嘩し始めやがった。

なんとかしないと.....

「よし、ならクロムに聞こう!」

「い⁈」

「クロムは俺を信じるよな?」

「いや、今まで共に戦ってきたオレを信じるよな?」

「あー、えーっと.....」

「どっちだ⁈」
「どっちだ⁈」

突然すぎる選択を強いられ、思わず戸惑う。

〝最高の仲間〟を信じるのか?
それとも〝大切な親友〟を信じるのか?

そんなの.....

「そんなの決められるわけないだろ......オレにとっては2人とも大切な存在だ......」

「クロムさん......」

「だけど.....決めることはできなくてもこの世界を終わらせることはできる!!」

『!!!』

オレはそれだけ言うと意識を集中し始める。

この世界は偽りの世界......
今までの事も、全て偽り......

思い込むんだ。

強く。もっと強く。

思い込めば思い込むほどオレの意識はより深いところに落ちていく。

そんな中、誰かがオレを呼ぶ声がした。


つづく。


〜次回のクロムの4コマW!〜

また、再び会える日をオレは待ってる。


-これで、終わりだ。-

クロムの4コマW•10
『新たなる力』


「お前は......マッハ!!」

「やれやれ、本当に世話かけさせやがって......」

そんなやりとりをしていると、壁にのめり込んでいたはずの奴がいつの間にか起き上がっていた。

奴はこちらを数秒見つめたあと、両腕を後ろに伸ばしたかと思うと、そのままの姿勢で突っ込んできた。

「ちっ、わけ分からねえ攻撃してきやがって.....」

マッハは左手でバックルに挿さっていた〝S〟のメモリを抜き取ると、いつもとは違う形の刀に空いていたスロットにはめ込んだ。

〝スピーダー!マキシマムドライブ!!〟

「神速斬り......」

そう呟くのが聞こえた瞬間、

スバァ!
っという音と共にやつは真っ二つになり、無惨にも床に叩きつけられていた。

「おお!やりやがった!!」

「ま、油断さえしてなきゃこんなもんだろ......」

そう言うとマッハはメモリを抜きとりベルトを閉じると、元の姿に戻った。

「やっぱり今までのは変身......」
「でもなんでお前まで⁈ってなんでここに⁈」

「それは......」

と言いかけたとき、やつがどこにもいないことに気がついた。

「あれ⁈さっきのやつは....?」

「っと、そんなことを言ってる場合じゃなかったな.....」

「いや、だからさっきのやつ....」

「分かってるよ。さっきのやつはおそらく逃げたんだろう......急いで追いかけるぞ!」

「あ、ああ。でもちょっと待っ」

って、もういない.......

相変わらずそういうところは早いな......

とりあえずはユーシャを起こして.....

「うっ、痛てて.....」

「うーん.....」

あ、すでに起きてたか。
ミナノも大丈夫そうで....

って、そうじゃなくて!!

「おい、無事かクロム⁈それにさっきのやつは.....?」

「おいおい、それはこっちの台詞だぜ」

「そうか。なら良かった....」

「そうそう、さっきのやつを追いかけないと!!」

「追いかける....?一体何があったんだ?」

「それは行きながら説明する!ミナノは危ないからここにいてくれ」

「わ、分かりました!」

「よし、行くぞ!」

「おう!」

そう意気込むと、まだ痛む体に鞭を打ち、外へ飛び出していった......



「......というわけなんだ」

「なるほどな。大体事情は分かった」

「お、そんなこんなしてる間に追いついたぜ!」

前を見ると、そこには少し荒い息をしたマッハとやつがいた。

追いつくとすぐにオレはマッハに声をかける。

「おい、大丈夫かマッハ?」

「大丈夫も何も、今見つけたところだ。それにしても.....」

「う、ああ......」

ふっと周りを見渡すと、ほとんどの家や物がなくなっており、殺風景な景色へと変貌していた。

「あの野郎......こんなにたくさんの物を消しやがって.......!!」

「別にそれは問題じゃないが.....とにかくあいつを残しとくのは面倒だ。片付けるぞ!!」

「え、問題じゃないってお前......?」

「とにかく、この.....マッハって人がそう言ってるんだし、先にこいつを倒そう!もしかしたらこいつを倒せば元に戻るのかもしれないし......」

「.....分かった。いくぞ、ユーシャ!マッハ!」

「おう!」
「ああ!」

〝ライトニング!〟
〝ウォーター!〟

「よし、俺も.....!!」

そう言うとマッハは赤く輝くメモリを取り出し、素早く腰に巻きつけていたベルトに差し込んだ。

〝スピーダー!〟

『変身!!!』

「おっし、行くぞ!!」

直後勢いよく飛び出したオレ達は、やつに向かって一直線に走り抜けていく。

それを見たやつが右手を振り上げたかと思うと、こちらに向かって勢いよく降り下げた。

「なっ、なん......」

っと言いかけて気がついた時には、ものすごい勢いで地面に叩きつけられていた。

「(大丈夫かクロム⁈)」
「あ、なっ、なんとか......」

そうは言ったものの、体はすでにガタガタで立ち上がるのがやっとだ。

それにしても今の攻撃、一瞬何をしたのか分からなかったが恐らくは....

「衝撃波......か」

いやいや、冗談じゃない。
もしもう一回あんなの喰らってみろ?
その時は本当にお陀仏だ。

「(クロムのやつはやばそうだな....さっきのダメージも十分残ってるし、もう攻撃は受けられないぞ.....)」

「ああ.....そういえばマッハは⁈」

オレがそう思って前を向くと、マッハは風を切るような音を出しながらやつを滅多打ちに斬り裂いていた。

「さっ、流石マッハだ。これならオレの出番はない......」

直後ズザァァっという音と共にマッハがこちらにぶっ飛んできたのが見えた。

オレがひょいと避けると、マッハは「痛つっ......」と声を漏らしながら地面に半分のめり込んでいた。

「おいおい、オレの出番はないと思ったのに、何すっ飛んできてんの⁈」

「あはは、悪りいな。まあ、そんなこともある」

「そんなこともあるってお前......」

そんなやりとりをしていると、突然足元がぐらつきオレはバランスを崩した。

この感覚、この戦法はオレをダウンさせたあの時のものだと気づいたときには遅く、オレとマッハは真上に打ち上げられてしまった。

「ぐああ!!」

コントロールの効かなくなった体は空中を回り続け、攻撃の絶好の的となってしまっていた。

回りながらも必死の思いで真下を見つめると、やつがニコニコしながらさっきの衝撃波を打つため構えていた。

お、終わった.....

そう思ったとき、突然何かにぶつかった感覚がした。

まさかと思い後ろを振り向くと、マッハが少し笑いながらこちらを見ていた。

「マッハ、お前......!!」

「せっかく助けに来たのに死なれては困るからな!」

「‼︎」

その言葉を聞いたときにはオレの体は地面に叩きつけられていた。

マッハのやつ.....
カッコつけやがって......

そう思った2秒後、マッハはボロボロになった姿で真っ直ぐに落ちてきた。

「おい、大丈夫か......」

って、マッハのやつ気絶してる⁈

やっ、やばい。
これ......状況最悪じゃないか.....

ってかこいつ、一体何しに来たんだよ......

そんなことを考えていると、不意に背後から「おい」と声をかけられた。

驚いたオレが慌てて後ろを振り向くと、そこにいたのは......

「ま、魔王.....」

「お前大丈夫か?ずいぶんとズタボロのようだが.....」

「へへ、ちょっとつまづいただけだぜ.....」

「そうには見えないが......」

「(おいクロム、一旦オレと代われ!)」
「え?ああ、構わないが.....」

そう言ってオレは意識を集中させると、中にいたユーシャの意識と交代した。

オレとバトンタッチしたユーシャは会話を続ける。

「魔王オレだ、ユーシャだ!」

「ユーシャだと......?」

そう呟く魔王は驚きを隠せない。

まあオレの体で「自分はユーシャだ」と言われればそうなるよな。

「お願いがあるんだ。今から....」

「“オレと共に戦ってくれ”と言うんだろ?だがそれはお断りだ」

「そんな.....」

「だが力を貸すことはできる。ただ....」

「ただ......?」

「この力はあまりにも強大だ。お前に扱えるかどうか......」

「それでもいい!オレはあいつを倒さなきゃならないんだ!どうしても.....!!」

「分かった.....」

そう言うと魔王はどこからか透明に輝くものを取り出し、ユーシャに渡した。

それを見たユーシャは驚愕した表情で口を開く。

「お前、これ.....」

「ああ......」
「俺の魂、お前達に預ける!!」

「......ありがとよ、魔王」

直後オレの意識は再び深いところから呼び出される。

「(分かってるな、クロム.....)」

「ああ、もちろんだ!」

そう言うとベルトが突如輝きだし、今までメモリを差し込んでいた2つのスロットの間に、新たに3つ目のスロットが現れた。

オレがそれを確認すると、さっき魔王から預かったメモリをそのスロットに思い切り差し込む。

『うおおおおお!!!!』

「⁈」

これは....
力がみなぎってくる.....

これなら....!!


〝ライトニングウォーターヴィクトリー!!〟


「これなら勝てる!!!」

そう叫ぶと同時にオレは無意識に走りだしていた。

その様子を見てすでに混乱していたのか、やつはどうしたらいいか分からないという構えで立っていた。

「一撃で決める!!」

オレはベルトから3本のメモリを抜き取ると、それらを全て新しく3つに増えたスロットの、腰の別のスロットに差し込んだ。

〝ライトニング!ウォーター!ヴィクトリー!ハイパーマキシマムドライブ!!〟

「うおおおお!!」

その動作を見たやつは咄嗟にかわそうと後ろへ下がる。

が.......

「それで避けたつもりかぁぁぁ!!!!」
「(いっけえぇぇぇ!!!)」

「.......あ⁈」

「クエイクドライブッ!!!」

ドゴォォ!!
という轟音という爆音が鳴り響き、あたり一面が風圧で一気に吹き飛ぶ。

自分でも予想していなかった以上の威力に思わずしゃがみこんでいた。

しばらくして風が収まったのを確認してあたりを見渡すと、辺り一面が殺風景になっていた。

「ふええ....なんて威力だ。だけど....」

あたりにはやつの姿はなく、襲ってくる様子もなかった。

「どうやら倒したみたいだな.....」

そう言いながら変身を解くと、いきなり右手を掴まれた。

「うわっ⁈マッ、マッハ⁈」

「よく倒してくれた!これで次の策まで時間ができた。まあ、あんまり時間はないが....」

「おい、一体どういうことだよ?時間がないって....」

「それはミナノと合流してから話す!だから今は走れ!!」

本当になんなんだ.....
でもマッハが何か知ってるのには違いない。でも何を......

そう考えていると、マッハは静かに口を開き、言った......

「お前は大きな勘違いをしているんだ、クロム」


つづく。


〜次回のクロムの4コマW!〜

クロム「どういうことだよ......」

信じるのは〝最高の仲間〟か?
それとも〝大切な親友〟か?


-これで、決まりだ。-



さて、またまた突然ですがここからは幻想世界編の予告です。

今回は本編に登場する新キャラを一体紹介しましょう。

その新キャラはこちら ↓


クラウド


元気そうにしている子供のようにも見える子ですが、果たして本編ではどう活躍するのか.....?

では、また明日。

クロムの4コマW•9
『Vのメモリ』


ガッ!!

「くっ......この野郎、かなり強いぞ......」
「(こうなったらライトニングウォーターはやめて、ライトニングソルジャーでいこう)」
「了解!ダンディ!」

「おう、ほらよ!」

オレはダンディから勢いよく飛んできたSメモリを受け取ると、すぐさまWのメモリと入れ替える。

〝ライトニング!〟
〝ソルジャー!〟

変身チェンジ完了の音が鳴り響くのを確認すると、両手にロケットランチャーを抱え、そのまま相手目掛けてぶっ放した。

小さな半円を描きながら飛んでいったロケットは、相手に着弾したかと思うと、そのまま大きな爆発音と共に大爆発を起こした。

「よし!流石にやっただろ......」

「お、おいクロム、ユーシャ、あれ.......」

「なんだよダンディ......」

そう言いながら爆発が起こった方を見てみると、煙の中に丸くて黒いシルエットが一つ立っているのが見えた。

そんな馬鹿なともう一度よく見てみるが、やはり煙の中には黒いシルエットが映っている。

黒いシルエットは徐々に歩きだしたかと思うと、もうもうと立ち込める煙の中から姿を現した。

「嘘......だろ?」
「(仕方ない、こうなれば他の手を試すぞ!)」
「........分かった」

直後オレは前方に向かって走り始め、息を少し荒くしながらも走りながらメモリを入れ替える。

〝フレイム!〟
〝ウォーター!〟

「喰らいな!!」

バキッ!
という音と共にオレが炎を纏った拳で殴ると、殴られた相手はそのまままっすぐに吹っ飛ばされた。

「まだだ!」

〝フレイム!〟
〝ソルジャー!〟

「おらよっと!」

っとメモリチェンジを終えるとすぐにSのメモリを腰のスロットにはめ直した。

〝ソルジャー!マキシマムドライブ!!〟

「紅蓮の波動乱撃!!」

幾重にも鳴り響く轟音を聴き流しながら、これでもかと技を放ち続ける。

やがて前方が火の海になっているのを確認すると、オレは撃つのを一旦やめ、灼熱の業火の中で焼かれているであろうやつの方をジッと見つめる。

「さっ、流石にこの中で無事なわけないよな......」
「(ああ、これでやっと片付い.....)」

『⁈』

オレとユーシャは直後何が起こったのか一瞬分からなかった。
しかし、額に疼く痛みと体が宙に浮いてるのを実感して初めて自分達が地面から殴られたということが分かった。

ぐはっ!
っと小さな呻き声が上がると同時にオレ達は地面に叩きつけられていた。

「オ.....オレ達の攻撃が全て効かない.......!!」

それでも急いで立ち上がろうと目を開けると、やつが真上からとんでもない速度で落下してきているのが見えた。

咄嗟にかわそうとするも間に合わず、オレはもろにやつの拳を喰らう。

「クロム!!」
「クロムさん!!」

「(.....きろ、ク..........ム.....)」
「ユーシャ.....」

途切れ途切れで最後まで聞き取れなかったユーシャの言葉を最後に、オレの意識は薄れていった.......



「......ク......」
「.......」

「クロム......」
「........うっ.....」

「起きろクロム!!」
「うーあー.....ユーシャ?」

「おお、気がついたか!心配したんだぞ!」

「ここは......?それにあいつは......」

「ここは探偵事務所だよ!いやー、意識が戻って良かったよ.....!!」

「あ、ああ.....」

「おし、今何か飲むもの持ってくるな!」

そう言ってキッチンの方へ向かうユーシャの背中を見ながら、ゆっくりと今の状況を整理する。

そうか、オレはあいつに負けたのか......

あんまり覚えてはいないが、おそらく最初の一発目からほとんど意識が途切れていたのだろう。

それにしたってなんなんだあいつは......


思い出すこと3日前、ダンディの方から王様が呼んでいるとの報告を受けたオレとユーシャは、何かと思いながらシュライ......いや、王様の元へと向かった。

呼ばれてきた用件を聞くと、なんでもここ最近この辺で色々なものが消失しているとのことだった。

王様は兵士にもその原因を調べさせてはいるが、是非とも探偵のオレ達の力も借りたいということらしかった。

ユーシャはその依頼を快く引き受け、オレはユーシャの意思に賛同し一緒に事件の原因を探すこととなった。

そして今日の朝、ダメもとでユーシャとダンディとガーターとミナノの4人と一緒に捜索していると、あたりをキョロキョロしている怪しいやつを見かけた。

まあ、最初はただ怪しいというだけで事件に関係ないだろうと気にもしていなかったが、あまりにも挙動不審なのでガーターが注意しに行くと、オレ達はその間に休憩を取ろうということになった。

オレ達は町のベンチに腰掛け、休みながらガーターと怪しいやつのやりとりを見ていたが、一瞬の間に起こった出来事に全員が青ざめた。

ついさっきまで怪しいやつとやりとりをしていたガーターが一瞬にして消えたのだ。

これは明らかに異常だと気づくのと、こいつが原因......いや、下手すれば犯人ということは同時に把握できた。

そうしてオレ達は戦闘になったのだが......見事に敗北してしまったというところか.......

そんなことを長々と考えていると、ユーシャが「はい、これ」っとコップに水を注いできてくれた。

オレはそのコップを「ありがとう」と言って受け取ると、一気に飲み干す。

「ふはー、生き返るぜー!!」

「それは良かった」

「ところで、この傷の手当てはユーシャがしてくれたのか?」

「いや、オレじゃない。たまたまこの町に来ていたという僧侶に頼んだんだ」

「僧侶?」

「ああ。紫色の体に青い教会の帽子を被った子だよ。名前は確か......」

「.......ミレア?」

「そう、ミレアだ!.......なんで分かったんだ?」

「いや、ちょっとね......」

そうか、すっかり忘れてたがミレアもこの世界にいるのか。
聞いたところによるとミレアは何も変わってなさそうだな......

そう思っていると、ユーシャが思い出したかのように口を開く。

「そうそう、そのミレアが言うには、全治に一週間はかかるそうだ」

「......え?一週間......⁈」

ごめん、前言撤回。
やっぱりミレアも多少は変わってるみたいだ。オレの知ってるミレアは回復呪文を使えたはずだ。それが全治に一週間って......

「まあ、一週間くらいで済んで良かったが......お前がそんな状態ではな......」

そう言うとユーシャはガックリと肩を落とした。

そうか、Wは2人いないとなれないんだったな......

その事に気がついてオレも下を見つめたまま動けなかった。

そんな時、

「せめて〝V〟のメモリがあればな......」

っとユーシャが小さな声で呟いた。

それを聞き逃さなかったオレはすかさずユーシャに話しかける。

「〝V〟のメモリ......?」

「⁈」
「きっ、聞こえてたか......」

「まあこの距離だからな。それでなんだよ、〝V〟のメモリって......」

「本当は見つけるまでお前には内緒にしておく予定だったんだが、聞かれたんなら仕方ない.....」

「?」

オレがそのメモリの正体が全く分からないという顔をしていると、ユーシャは続けて口を開く。

「いやな、実はお前が帰れる方法をを内緒で探してたんだ。そしたら〝V〟のメモリっていうのに行き着いてだな......」

「うんうん」

「その〝V〟のメモリは空間に穴を開けられるらしいんだよ」

「......はい?空間に穴を開けられる?」

「ああ、だからそのメモリを使えばお前の世界への空間に繋げられるかなと思ってよ......」

「ユーシャ......」

ここ最近眠そうな顔をしていると思ったら、オレの為にそんなことをしていてくれてたのか.....

思わず零れそうになった涙をギュッと抑えると、オレはユーシャの方を向いて言った。

「ユーシャ、気持ちはありがたいが、今は必要ないのでは......?」

「いや、そうでもないんだ。その〝V〟のメモリには莫大なエネルギーがあるらしく、使ったものはとんでもない力を得るとか......」

「とんでもない力......?」

「そ。だからそれがあればあいつにも勝てると思ったんだが、肝心の持ち主が見つからないんだよ.....」

「うーん、一人心あたりがあるような、ないよう......」

っと言いかけたとき、背後から大きな音が響いてきた。
何かと思ってオレとユーシャが後ろを振り向いてみると、そこには息を切らしたミナノが立っていた。

「ど、どうしたんだミナノ!」

「はあはあ、それが大変なんです.....」

「だから何が大変なんだ?」

「はっ、ハート王国の城が中にいた人ごと消えてしまいました!!」

「ええ⁈」

「あいつ......ついに城までも消しやがったか......!!」

「今ダンディさんが一人で戦ってくれていますが、それもいつまでもつか......!!」

っと、そう伝えてくれたミナノの顔は今にも泣きそうになっていた。

それを必死に止めようとオレは口を開く。

「だ、ダンディなら大丈夫だ!それよりも早くダンディの応援に.....」

「ミナノ、後ろだ!!」

「⁈」

ユーシャの張り裂けそうなくらい大きな声を聞いたオレがミナノの後ろを見ると、そこにはこのオレをこんな状態にしたやつがいた。

オレが避けろという前にすでにミナノは宙を浮いており、ハッと気づいた時には隣にいたユーシャに勢いよく激突していた。

「......ッ‼︎」

「ユーシャ!ミナノ!!」
「はっ!!」

いつ近づいていたのか、オレがユーシャ達に気を引かれている間にやつは目の前で立っていた。

「なっ、いつの間に......!!」

「......も........」

「は......?!」

やつは何か言いたそうにもごもごと口を動かしたかと思うと、静かに口を開いて......言った。

「もう元の世界に帰るのは諦めた方がいいかもしれませんね......」

「........?!」
「お前は一体.......」

その言葉を聞いたオレは開いた口が塞がらなかった。

オレがあっけに取られていると、やつは突然飛び上がり、オレの脳裏に焼き付いていたあの光景と同じ光景をそこに作りだしていた。

これはかわせないと思った時、突然やつは真横に吹っ飛んでいき、壁に激突した。

「やれやれ、やっと見つけたぜ......世話かけさせやがって......」

声がした方を咄嗟に振り向くと、そこには赤いボディに青いハチマキをつけ、堂々と立っている男がいた。

一瞬誰だか分からなかったが、目を凝らしてよく見てみると、そいつが誰であるかはすぐに分かった。

そのあまりにも見慣れた姿を見ながらオレはそいつの名を叫んだ。

「お前は......マッハ!!」


続く。


〜次回のクロムの4コマW!〜

マッハ「おっと、そんなことを言っている場合じゃなかったな......」

???「俺の魂、お前達に預ける!!」

「〝ライトニングウォーターヴィクトリー!!〟」


-これで、決まりだ。-

クロムの4コマW•8
『怪しい薬にご用心⁈(後編)』


「くっそー!調子に乗りやがって‼︎」

オレは息を切らしながらも、ひたすらにクラウンの攻撃をかわし続けていた。

かわしながらもなんとか反撃を試みようとはしてみるも、相手の攻撃の手数が多すぎるせいで避けるのに精一杯になっていた。

「くっ、このままじゃまずいぜ......」

「ならもっとまずくしてあげましょうか?」

「⁈」

そう言ってクラウンは頭上に青白い光を精製したかと思うと、それを勢いよくこちらに飛ばしてきた。

咄嗟にかわすオレだったが、背後にミナノがいることをすっかり忘れていた。

「しまった!避けろミナノ!!」

「え⁈あ......う......」

っと反応こそしたものの、体は反応しきれなかったのかミナノに直撃してしまった。

「やべ!大丈夫かミナ......」

と言いかけたところで、ミナノが目の前から消えてしまった。いや、消えたんじゃない。これは......

「え、え......?」

「なっ......ミナノまで縮んじまった⁉︎」

「おいおい、嘘だろ⁈」

「嘘じゃないんですね〜これが」

後ろを振り向くとクラウンは、ニヤニヤしているだろうという態度でそう言った。

「ど、どういうことだ⁈」

オレがそう言うと、クラウンは待ってましたと言わんばかりに喋り始める。

「なあに、私は長年の研究すえ、ついに生物のサイズを小さくできる魔法を身につけることに成功したっていう話ですよ」

「なっ......そんな魔法が....?!」
「おいまさか、お前.....!!」

「ふふ、そのまさかですよ......」

なんてこった。

まさかそんな魔法を開発していたなんて......
そして恐らくはその魔法を飲み物の中に混入させ、みんなに配ったのだろう。

だが......

「なんでそんな回りくどいことをしたんだ!みんなを小さくするならそんなことしなくても......」

「ふふ、それはですね......」

「なっ、なんだよ.....」

「さりげなく探偵事務所の君たち2人を抹殺するためですよ」

「なっ、何⁈」

「オレ達を⁈」

予想外の回答が返ってきたオレ達は口を閉じてしまった。

そんなことはお構いなしにクラウンは続ける。

「そ、何せ君たち2人は邪魔でしたからねぇ」

「じゃ、邪魔......?」

「そうです。君たちはSメモリを使って悪人を倒したりして町の平和を守っているのでしょう?」

「そうだ。それが何か悪いのか!」

「すごく悪いですよ。だってあなた達がいたら私の素晴らしい研究成果であるこの魔法を思う存分使えないじゃないですか!」

「なるほどな。大体事情は分かった......」

つまりこいつはあの魔法を使って、この町で何かするつもりなんだ。

何をするかは分からないが、きっとみんなが迷惑することに違いない。こいつは止めなくては......

でもどうやって......!!

「おっと、少々お喋りがすぎましたね。クロム、君だけ小さくならなかったのは計算外でしたが、片方が小さくなっていれば同じこと!」
「始末させてもらいますよ」

「くぅ!!」

なっ、何か策はないのか......
あいつを倒す何か策は......!!

「ティア......」

そう呟くとオレは、無意識のうちにあの〝F〟と書かれたSメモリを取り出していた。

こんな時、魔法使いのお前ならどうしてたかな......

「さあ!あなたも小さくなって.....これでフィナーレです!!」

「......!!」

瞬間!

オレは前方に向かって真っ赤に輝くメモリを投げていた。

なぜ投げたのかは分からない。

だが、オレの中でうごめく何かがオレをそうさせた!!

真っ直ぐに宙に投げ出された赤いメモリは、見事な半円を描きながらもクラウンの魔法に衝突した。

すると、みるみるうちにメモリは小さくなっていき、ユーシャ達より一回り小さいくらいのサイズにまで縮んでしまった。

それを見ていたオレは、咄嗟に小さくなったメモリまで走り追いついたかと思うと、それをユーシャに向かって蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされたメモリは、パシッという音と共にユーシャの手で受け止められていた。

「え⁈おいクロム、これどうすん.....」

「そいつを使って変身するぞ!!」

「ええ⁈そんな無茶な!」

「無茶じゃない!元はオレ達の仲間だったんだ!だからできる!!」

「なんだかすごい理論だが.....こんな状況だ。オレはお前を信じるぜ、クロム!!」

「なっ、まさか.....?!」

その様子を一部始終見ていたクラウンは驚きのあまり動けずに、ただこちらを見つめていた。

それを横目で見ながらも、オレはいつものように叫ぶ。

「いくぜユーシャ!」

「おう、クロム!」

〝フレイム!〟
〝ウォーター!〟

『変身!!』

「さあ......お前の罪を数えな!」

「くっ、しまった!まさか別のメモリでもできるとは!!」

「バカ野郎!これはティアのSメモリだからできるんだぜ!!」

そう言いながらダンディの時のように自分の体が変化してないかなっと見てみると、元のピンク色のままで特に変化はないようだった。

なんだ、今回は変化なしか......
っと思いながらよく見てみると、マントの色がオレンジから真っ赤に変化していた。

「あっ、ユーシャのSメモリを変えるとマントの色が変わるのね......」

「(だーかーらー!そんなこと毎回毎回気にしてないで戦うぞ!)」

「ああ、毎回毎回悪いな」

「準備はいいですか?なら私か」

「オレから行くぜ!喰らって真っ黒になっちまいな!◯ラ多連弾!!」

直後オレの両手から放たれた炎の塊は真っ直ぐ飛んで行ったかと思うと、突然何かに引きつけられるかのようにこちらに戻ってきた。

「あぶねっ!(ええ⁈)」
っと言いながらも咄嗟にかわすが、背後からひどいくらい大きな悲鳴が聞こえてきた。

まさか......
と思いながらも後ろを振り向くと、そこには真っ黒になっていたダンディがいた。

「うええ....まさかこの技ってティアじゃなくてもダンディに当たるのか.......」

「ふふふ、まさか味方に攻撃するとはねぇ〜」
「これは何かの余興ですか〜?」

「うっ、うるせえ!すっ、すまないなダンディ.......」

「お、お前なぁ......」

その後バタッという音ともにダンディは動かなくなってしまった。

すまないダンディ。
もう撃たないから......

そんなことを考えていると、いつの間にかクラウンがすぐ目の前まで接近していた。

それに気がついたオレはクラウンの攻撃をギリギリかわす。

するとクラウンは身を翻し、青白く光る魔法をかわした直後のオレに放ってきた。

「やっ、やべ!」
「(お、おい!)」

「ふふ、これで今度こそ終わりですよ!」

「........へ!」

「⁈」

そう言うとオレは青白く光る魔法に向かって◯ラを撃ち相殺させると、頭上にいたクラウンを思い切り天空めがけて蹴り飛ばした。

「ぐおぁぁ!!」

『今だぁぁぁぁ!!!!』

そう叫んだオレはフレイムのメモリを腰の空いてるスロットに差し込んだ。

差し込むと同時にいつもと同じように構える。

〝フレイム!マキシマムドライブ!!〟

「フレイムランスL2!!」

直後オレが放った炎の槍は真っ直ぐにクラウンへと飛んでいき......

「ぐおぁぁ!!」

......着弾した。

「(おお!これで......)」
「まだだ!!」

オレが上を見上げると、そこには鎌を今にも振り降ろさんとするクラウンが急降下してきているのが見えた。

「やれやれ、それじゃあの時と同じだな!!」

そう叫ぶとオレはWのメモリを抜き取り、腰のスロットにはめ直した。

〝ウォーター!マキシマムドライブ!!〟

「(とどめだ!)」
「おう!バーニング......」

「⁈」
「む、無駄ですよ!!!」

「......オーシャンドライブ!!!」

その瞬間、バコォ!!っという轟音と共に小さな爆発を起こした。

オレはその爆発によるダメージを水を纏いながら軽減し、かっこよく着地......するはずだったが、爆風に巻き込まれた体は無惨にも地面に叩きつけられた。

「痛ぇ.....」

っと反射的に口から言葉が漏れながらも爆発が起こった方を見てみると、そこにはボロボロになったクラウンが倒れていた。

ガチャン
っという音と共に変身を解き、クラウンの元へと歩み寄ると、オレはクラウンをとっ捕まえて言った。

「この勝負、オレ達の勝ちだ。さ、みんなを元に戻してもらおうか」

「くっ.....」

オレに掴まれながらもなんとか逃げ出そうと辺りを見回していたクラウンだったが、すでにダンディが呼んでおいた兵士たちを見て諦めたのか「仕方ないですね.....」っとだけ言って逃げるのをやめた........


-翌日-

「いやー、やっぱり元のサイズのがいいよなー!」

「まあ小さいよりはいいだろうなー」

あの後クラウンは王様の命により速攻で元に戻る薬を作らされ、無事王国中の国民は元の大きさへと戻った。

ユーシャは「小さいうちにしかできないことでもやっとけば良かったな......」っと戻る前に言っていたが、それでもやっぱり元の大きさが一番だろう。

少し気になっていたクラウンの処分だが、王国のためになる薬を作るという約束でこの国に残ることとなった。

まあ、またもし何かやらかしてもいいように要監視状態らしいから問題ないだろう。

「おーい、クロム!飯できたぞー!」

「おう、今行く!」

そんな事を考えながらユーシャの元へと向かうオレにはまだこの時、この後起こる異変に気づくわけもなかった......


.......つづく‼︎


〜次回のクロムの4コマW!〜

ユーシャ「その〝V〟のメモリは空間に穴を開けられるらしい......」

クロム「オっ、オレ達の攻撃が全て効かない.....!!」

???「もう元の世界に帰るのは諦めた方がいいかもしれませんね.....」


-これで、決まりだ。-